存続危機に向き合う八戸の伝統行事
八戸の伝統武芸「加賀美流騎馬打毬(だきゅう)」をめぐり、保存・継承の危機が改めて浮き彫りになった。7月4日、八戸ポータルミュージアムはっちで開かれた応援イベントでは、南部家16代当主の光隆氏ら関係者が現状を説明し、来る8月2日の長者山新羅神社での奉納試合への来場と支援を呼びかけた。
騎馬打毬は1827年に八戸藩8代藩主・信真が導入した歴史ある伝統行事で、来年には200周年を迎える予定だ。しかし、競技に使う馬6頭のうち、POLOライディングクラブ(豊崎町)が営業停止した影響で5頭が同クラブで飼育されており、うち4頭が30歳前後と高齢であることが示された。加えて、騎手や飼育スタッフ、資金面で多くの課題を抱えている。
光隆氏は講演で「人、馬、資金がそろわなければ継承できない」と強調。近年は騎手を擁する八戸騎馬打毬会や新羅神社、支援団体と協議を重ね、自らも今年から騎馬打毬会に入会し顧問として活動していることが紹介された。
- 主な課題:馬の高齢化、飼育体制の脆弱さ、運営資金の不足
- 示された対策案:スポンサー獲得、馬主制度の導入、乗馬クラブの後継者探し、飼育スタッフの増員
- 資金見通しの一例:乗馬会員を募集し飼育スタッフ4人を雇用した場合でも、年間で約970万円の不足が見込まれるという試算が示された
イベントでは若手の姿も示され、講演に登壇した中学2年の板橋東義さんやその兄・賢汰さん(19)、今年騎手デビュー予定の中学1年・木村琉生さんらがそれぞれ考えを述べた。賢汰さんは「僕が立て直します」と力強く語り、会場から大きな拍手が送られた。
「騎馬打毬がこれからも八戸の文化として続くよう、皆さんに知ってほしい」— 光隆氏
一方で、地域外の協力の動きもある。三沢ホースパークは今年の奉納試合に馬を2頭貸し出す予定で、経営者の浄法寺朝生氏も騎手として参加する意向を示した。浄法寺氏は乗馬を通じた健康づくりや新たなコミュニティの形成、県外・海外からの客を見込む観光的側面にも言及し、地元会員の確保と外部需要の取り込みを組み合わせた継続運営の可能性を示唆した。
主催側の説明によれば、長年にわたりPOLOライディングクラブは無償で練習場や馬の提供をしてきたが、今年になって乗馬会員募集を停止し営業を取りやめたことが大きな打撃となった。関係者はクラブ再建の必要性を訴えつつ、飼育の実務や資金の裏付けが整わなければ来年の開催も不透明だと警鐘を鳴らしている。
| 主な日程・場所 | 8月2日 長者山新羅神社(長者1)で奉納試合 |
|---|---|
| 歴史 | 導入:1827年 来年で200周年 |
| 現在の課題 | 馬の高齢化、後継者不足、年間約970万円の資金不足試算 |
支援する会の関係者からは、奉納試合当日に募金を呼びかける計画が示され、寄付金の使途は打毬会に委ねる方針とされている。打毬会の山内卓会長は、会員と家族が無償で支えてきた現状を説明し「これ以上負担を増やすことは限界に近い」と述べ、地域全体での支援を訴えた。支援組織の工藤義治氏も、今後の支援方法について関係者と協議を続ける意向を示し、「まずは8月2日に来場してほしい」と呼びかけた。
住民にとって騎馬打毬は文化遺産であると同時に、季節行事や観光資源としての価値を持つ。地元メディアや市民団体、企業の理解と協力が得られれば、保存の道筋は見えてくる可能性がある。だが、馬の世代交代や飼育資源の確保、安定した資金計画を短期で整えるのは容易ではない。
八戸の伝統を次世代へつなぐには、行政の支援や民間のスポンサー探し、そして地域住民の参加・寄付が不可欠だ。8月2日の奉納試合は、地域の関心を高める試金石となる。関係者はまず会場に足を運び、行事の価値を直接知ることで支援の第一歩を踏み出してほしいと訴えている。