自治体と配置薬業者が連携、地域の防災・福祉を補強
医薬品の開発から販売までを手がける株式会社富士薬品(本社:さいたま市、代表取締役社長:高柳 昌幸)と埼玉県久喜市は、2026年7月28日に包括連携協定を締結した。両者は主に同社の配置薬販売のネットワークを活用し、防災・災害対策、健康増進、高齢者支援、市民サービス向上の4分野で協働する。久喜市が進める地域づくりと、配置薬の営業員が持つ訪問を通じた接点を結び付ける点が特徴だ。
協定により、市内公共施設への配置薬設置支援や、災害発生時の医薬品無償提供が明記された。平常時からの備えとしての配置薬の導入支援に加え、避難所が長期開設される事態が生じた場合、久喜市の要請に応じて医薬品を無償で供給する取り決めが含まれている。富士薬品側は、現在市内で約3,300軒の家庭・事業所と契約を結んでおり、営業員による定期訪問(いわゆる「廻商」)を通じた情報発信や見守り活動を期待している。
協定の主な内容を分かりやすくまとめると以下の通りだ。
| 連携分野 | 主な取組 |
|---|---|
| 防災・災害対策 | 公共施設への配置薬設置支援、被災時の無償提供、避難所への医薬品供給 |
| 健康増進 | 営業員によるOTC適正使用の啓発、薬剤師講話や体験ブース出展 |
| 高齢者支援 | 訪問時の声掛け・相談対応、見守り協力、受診呼びかけ |
| 市民サービス向上 | 異常発見の報告、道路保全通報、子ども見守り等への協力 |
配置薬は、定期的に営業員が訪問して補充や管理を行う家庭向けの医薬品供給サービスであり、万が一の際には常備薬を災害対応の資源として活用できる点が評価された。富士薬品はまた、熱中症特別警戒アラートが発令された場合、同社グループが運営する市内の調剤薬局併設ドラッグストアを一時的なクーリングシェルターとして開放する可能性も検討するとしている。
「とどけ、元気。つづけ、元気。」
同社が掲げるスローガンは、今回の地域連携でも地域住民の生活に寄り添う姿勢を示すものだ。営業員は厚生労働省の規定に基づき原則として登録販売者の資格を有しており、その専門性を生かした服薬アドバイスや生活習慣病予防の情報提供を通じて、市民の健康意識向上を目指す。
住民への具体的な影響と注意点
今回の協定は一連の公的支援を置き換えるものではないが、地域の日常的な安心感と災害時の即応性を高める実務的な効果が期待される。主な影響は次の通りだ。
- 被災時の医薬品確保:避難所や被災世帯への医薬品無償提供が可能となり、一次的な医療ニーズに対応しやすくなる。
- 健康管理の支援:定期訪問や市のイベントで薬剤師・登録販売者による相談や講話を受けられる機会が増える。
- 見守り機能の補完:営業員の訪問活動が高齢者の見守りや異常発見に寄与する可能性がある。
一方で、住民側が留意すべき点もある。配置薬の契約や利用は個別の契約に基づくため、被災時の対応が無償になる範囲や適用条件、店舗の開設時間などは事前に確認しておく必要がある。また、配置薬で提供できる医薬品は一般用医薬品が中心であり、処方薬や専門的治療は医療機関への受診が基本となる。
背景と今後の展望
久喜市は「人が笑顔 街が元気 自然が豊か 久しく喜び合う住みやすいまち 久喜」という将来像のもと、SDGsの理念を取り入れた総合振興計画で、地域の多様な主体との協働を進めている。富士薬品は配置薬販売に加えドラッグストアや調剤薬局も運営し、自治体連携は今回で47件目となると公表されている。こうした連携は、公的な支援リソースだけでは補い切れない細やかな日常支援や情報網の強化に資する。
今後は、具体的な運用面の詰めが焦点となる。たとえば、災害時の医薬品提供手続き、クーリングシェルターとしての店舗運用ルール、営業員による見守り情報の自治体側への共有方法などだ。市民が安心して利用できる体制にするためには、運用ルールの透明化と周知、個人情報の適切な取り扱いに関する取り決めが不可欠となる。
久喜市民や事業者は、配置薬に関する相談や災害時の対応について市の窓口や富士薬品の市内店舗に問い合わせると良い。具体的な窓口情報やイベント・講話のスケジュールは、今後市と富士薬品双方から案内される見込みだ。
今回の協定は、地域資源である民間の販売網を災害時の拠点や日常の健康支援に組み込む試みであり、全国の他自治体でも今後の参考になり得る。久喜市と富士薬品は連携を通じて、誰もが安心して暮らせる地域づくりを目指すとしている。