府中市で空き家をねぐらに 1年の追跡で判明
広島県府中市内で、ニホンザルとみられる個体群が市内の空き家3軒をねぐらとして利用していたことが、地元の鳥獣被害対策の専門組織などによる約1年にわたる行動追跡で明らかになった。追跡には地域の対策組織が関与しており、野生動物の行動パターンを把握することで住民生活への影響や予防策を検討している。
鳥獣被害対策の専門組織「tegos(テゴス)」で府中市を担当する山本徳孝さんは、行動範囲が把握できたことで対応が進めやすくなったと説明している。
行動追跡の結果、当該サルは複数の空き家を拠点に夜間などに滞在していた模様で、住民が夜間に不審な物音や痕跡を見つけるケースがあったという。空き家がねぐらとなると、糞尿による衛生面の悪化や建物への損耗、周辺農地への出入りによる農作物被害など、地域生活への具体的な影響が現れやすい。
住民生活への影響と懸念
空き家をねぐらにすることによる主な懸念は次の通りで、被害は直接的かつ二次的な問題を引き起こす可能性がある。
- 建物被害:屋根・雨どい・戸袋などの損傷、打破や引き摺りでの破損が生じる。
- 衛生・感染リスク:糞尿による悪臭や害虫の発生、衛生管理の悪化。
- 農作物被害・家畜被害:周辺の作物や飼育動物への被害拡大が懸念される。
- 安全面の不安:夜間に人が接近しての遭遇や、幼い子どもや高齢者の安心感低下。
府中市内ではこれまでにも猿やイノシシ、シカなど野生動物による被害が報告されており、空き家の増加はこうした被害を助長する要因として指摘されている。空き家は物理的に閉鎖されず出入りが可能であること、周囲に餌となる廃棄物や果樹がある場合には動物を引き寄せやすい点が問題とされる。
追跡調査の意義と今後の対策
今回の約1年にわたる行動追跡によって、個体群の行動範囲や滞在パターンが明らかになったことは、実効性のある対策を考えるうえで重要だ。具体的には次のような対応が検討され得る。
- 空き家の施錠・立入防止や管理責任者の明確化
- 住民への注意喚起と報告体制の周知(発見時の連絡先や注意点の共有)
- 周辺にある餌源の除去(付近の果樹の管理やゴミ容器の改善)
- 必要に応じた専門機関による個体の移送や巣の除去の検討
追跡調査に関わった団体は、得られた行動データをもとに府中市や地域住民と協議を進めるとしている。野生動物対策は地元自治体、専門組織、住民が連携して進める必要があり、今回の把握はその出発点となる。
空き家管理の地域的課題
少子高齢化や過疎化が進む地域では、空き家が増加し放置される傾向がある。空き家の放置は景観や治安だけでなく、今回のように野生動物の生息・ねぐら化を招く点でも問題視される。自治体は所有者に対する管理義務の周知や支援制度の検討、地域コミュニティによる見守りの仕組みづくりが求められる。
| 課題 | 具体例 |
|---|---|
| 空き家管理 | 施錠不備、廃棄物放置による動物誘引 |
| 住民対応 | 夜間の接近時の通報先周知、不用意な接触の回避 |
| 専門対策 | 行動データに基づく誘導・移送の検討 |
地域の安全を守るためには、所有者による適切な管理と、住民側での早期発見・通報が不可欠だ。専門組織の追跡で得られた情報は、具体的な防除計画策定に活用される見通しである。
住民への実用的な注意点
住民が日常で実践できる備えとして、自治体や専門組織が示す基本的な対応は次のとおりだ。
- 空き家の発見・疑いがある場合は市役所や地域の鳥獣担当に連絡する。
- 餌となる食品や生ゴミは屋外に放置しない。ゴミ収集場所は施錠や十分な管理を行う。
- 夜間に不審な音や痕跡を見つけた場合は無理に近づかず、写真等で記録して通報する。
今回の調査は、府中市に限らず広域的な野生動物対策の参考となる。空き家がねぐら化する現象は、地域の景況や生活環境の変化が背景にあるため、単独の駆除や一時的対策だけで解決するものではない。持続可能な管理体制と住民の協力が重要である。
広島県内では同様の鳥獣被害対策が各地で進められており、今回の追跡結果は府中市内の具体策を検討するうえで利用される。住民は最新の周知情報に注意し、空き家や周辺環境の管理に協力することが求められる。
(石井 裕子)