フィットネス市場の倒産が加速
健康志向の高まりを背景に国内で多様なフィットネス業態が出現する一方、法的整理に至る倒産件数が増えている。帝国データバンクの集計では、2026年1~7月で23件に達し、前年同期の19件を上回った。現状のペースが続けば、年間の倒産件数が過去最多となる可能性が示唆されている。
今回の調査は、2000年1月1日から2026年7月31日までに発生した、負債1,000万円以上の法的整理を対象としている。業態別・業歴別の傾向から、特に新興の小規模事業者が影響を受けやすい構図が浮かび上がった。
何が背景にあるのか
調査結果を読み解くと、倒産増加の背景にはいくつかの構造的要因がある。まず、出店ハードルが低く参入が容易な業態が増えたことだ。24時間営業の無人ジムや、マンション一室で運営するパーソナルジムなど、初期投資や設備コストを抑えて開業できる形態が注目を集めている。こうした業態は短期間で多くのプレーヤーが参入し、限られた商圏での競争が激化した。
また、集客・定着に関する課題も深刻だ。割引やキャンペーンで会員を集めても、通常料金に戻した際に顧客が離脱しやすい点や、短期集中プログラムで一時的に利用が増えても継続的な収益につながりにくい点が指摘されている。さらに、人件費や光熱費の上昇といった外部コストの上振れも、採算悪化を招く要因となっている。
帝国データバンクの分析
「駅近で安価、24時間営業・無人型のコンビニジムの台頭や、パーソナルジム、マシンセラピーなど多様な業態が乱立するなかで、十分な集客基盤を持たずに経営が破綻する新興ジムの倒産が目立つ」
この見解は、供給過多と需要のミスマッチが進行していることを示している。特に設立から10年未満の事業者が全体の6割を超えており、若い事業者の淘汰が目立つ点も調査で明らかになった。
利用者と地域への影響
倒産の増加は利用者の運動機会にもつながる。通っていた施設が閉鎖されれば、近隣での代替手段を探さねばならない。とくに地方や郊外では選択肢が限られるため、日常的な運動習慣の維持に支障が出る恐れがある。また、雇用の喪失や地域経済への波及も無視できない。
一方で、サービスの再編や事業統合が進めば、より持続可能なビジネスモデルへと転換する機会ともなり得る。月額固定制による安定的な収益確保や、会員の継続を促すプログラム設計、施設の差別化などが各社の喫緊の課題だ。
今後の注目点
当面注視すべき点は以下の通りだ。
- 出店・参入のペースと地域ごとの供給過多の度合い
- サブスクリプションや会員定着の仕組みを強化する取り組み
- 運営コストの上昇に対する価格戦略と効率化の実行状況
| 項目 | 調査で示された内容 |
|---|---|
| 倒産件数(2026年1~7月) | 23件 |
| 前年同期(2025年1~7月) | 19件 |
| 調査対象 | 負債1,000万円以上の法的整理 |
フィットネス市場は健康維持という公益性が高い分野であるだけに、市場の混乱は個人の健康行動にも影響を及ぼす。事業者側は持続可能な収益モデルの構築と利用者目線に立ったサービスの両立が求められる。消費者は価格だけでなく長期的に通いやすい環境かどうかを見極める視点が重要になるだろう。
(長谷川 由希/プレスリリースジェーピー全国編集部 健康担当)