県内導入が進む関係人口プラットフォーム
地元を離れた人々と自治体との継続的な関わりを可視化・促進する会員制の関係人口プラットフォーム「FAVTOWN(ファボタウン)」が、愛媛県内で導入を拡大している。2026年8月時点で、県内の自治体数を基準にすると20自治体のうち9自治体が導入しており、地域と都市部に暮らす若年層らとの接点を維持する仕組みが着実に広がっている。
サービスは2024年7月に松野町、鬼北町、愛南町での導入から始まり、以降今治市、新居浜市、伊予市、四国中央市、西予市、伊方町と順次展開してきた。導入自治体は、会員向けに地域ニュースや地域特産品の送付、デジタル会員証によるイベント連携などを通じて心理的距離を縮める取り組みを進めている。
提供機能と自治体の狙い
- ふるさと便(特産品や応援メッセージの送付)
- 地元ニュース配信(LINE等を活用した日常的な情報発信)
- デジタル会員証の発行による来訪・参加の可視化
- 会員属性・行動データの蓄積と施策改善への活用
自治体側は、これらの機能を通じて「転出後に途切れがちな接点」を補完し、将来的なUターンや関係人口の定着につなげる狙いを示している。産業振興や人口政策だけでなく、地域の文化・行事への参加機会創出、観光誘客、寄附や消費の促進といった多面的な効果を期待する声がある。
「私たちは、ふるさとを離れた皆さんと末永くつながっていきたいと願っています。」
この言葉は伊方町の導入に際して示された理念の一節だが、導入自治体の多くが似た姿勢で離れて暮らす地域出身者らとの関係維持を図っている。
国の制度と連動する意義
政府は2025年度から「地方創生2.0」を掲げ、住所地以外の地域と継続的に関わる人を登録・可視化する「ふるさと住民登録制度」の制度化を進めている。こうした国の方向性と連動する形で、FAVTOWNのようなデジタル基盤は自治体にとって「関係人口の存在を把握し、施策に反映するための実務的な道具」となる。
具体的には、会員データを用いた効果測定やセグメント別の情報発信が可能になるため、単発のイベントや広報だけでは届きにくかった層へ継続的に働きかけられる。若年層や都市部在住の出身者を対象に、生活情報や就業情報、子育て環境などのテーマで接点を作ることが、将来の移住・交流・経済活動に結びつく期待がある。
導入自治体と導入時期(主な例)
| 自治体 | 導入時期(報道上の導入順) |
|---|---|
| 松野町 | 2024年7月 |
| 鬼北町 | 2024年7月 |
| 愛南町 | 2024年7月 |
| 今治市 | その後導入 |
| 新居浜市 | その後導入 |
| 伊予市 | その後導入 |
| 四国中央市 | その後導入 |
| 西予市 | その後導入 |
| 伊方町 | その後導入 |
※報道では上記9自治体の導入が確認されている。導入の正確な時期や運用内容は自治体ごとに異なる。
地域住民・若者にとっての影響
地元を離れた若者やゆかりのある人にとって、定期的に地域の話題や特産品が届くことは心理的なつながりの維持につながる。帰省のきっかけ作りや、ふるさとへの関心を呼び起こす効果が期待される一方、自治体側は会員とのやり取りやデータ保護、継続的なコンテンツ供給といった運営上の負担にも直面する。
また、地域内での情報発信が増えることで、地元企業や商店が会員向けの商品やサービス提供を行いやすくなり、経済的な波及も見込まれる。行政側は、関係人口の増加を移住や定住の直接要因と結びつけるために、雇用創出や子育て支援などの受け皿整備を並行して進める必要がある。
今後の課題と展望
FAVTOWN自体は今後も全国展開を目指すとしており、関心を持つ自治体からの相談を受け付けている。重要なのはプラットフォーム導入後に、自治体がどう継続的な関係構築と施策改善を行うかだ。具体的課題は以下の通りである。
- 会員数・参加率の継続的な向上
- データ利活用に伴う個人情報保護と透明性の確保
- 受け皿となる地域内の雇用・居住支援の整備
県内ではまず9自治体の導入実績をもとに、他自治体が追随するかどうか、導入自治体がどの程度の成果を示すかが注目される。行政の政策担当者、地域企業、住民が連携して運用改善を続けられるかが、関係人口施策の成否を左右するといえる。
(青木 沙織)