再発した液状化、熊本の被害と経緯
今年7月の熊本地震から間もなく3か月を迎える中で、液状化現象の再発が地域で相次いで確認されている。国立研究開発法人・防災科学技術研究所の調査では、今回液状化した地点の96%が2016年の発生地点の「再発」であったと報告され、地震直後の混乱にとどまらない長期的な地盤脆弱性が明らかになった。
熊本市では、2016年の地震後に対策工事を行った地区とそうでない地区で被害の程度に差が出ている。市南区近見地区では、地下に鋼板を打ち込み地下水位を下げる工法などが実施され、今回は目立った液状化被害が出なかった。一方で、16年に被災した52地区のうち対策工事が実施できたのは2地区のみにとどまり、今年は10地区で液状化が発生した。
被災住民の状況と対策の限界
個人で実施できる地盤補強にも限界がある。ある被災者は前回地震後に自宅を補強するため約200万円を投じて杭を打ち込んだが、地域全体の液状化で再び傾きが生じたと語っている。こうした実例は、個別補修では地域全体のリスクを解消できないことを示している。
「地域でまとまって対策すれば良かった」との悔恨の声もある。
地域単位での工事が進まない背景には、費用負担や住民合意の問題が横たわる。石川県や新潟市など他地域での事例では、住民に一定の費用負担を求めるケースや、街区ごとの全員同意を条件とする自治体もあり、対策の実施方法や負担の在り方で自治体ごとの差が生じている。
熊本で実施されている工法と他地域の動き
熊本市が近見地区で採用した工法は、地下水位を低下させる「地下水位低下工法」。道路下の集水管から地下水をくみ上げて水位を下げることで、液状化の発生しやすさを軽減する仕組みだ。被害軽減の成果が確認されたことが、他地域での実証実験や本格導入の判断材料となっている。
たとえば、能登半島地震の被災地では同工法の実験が行われ、氷見市では3地区計13.5ヘクタールを対象に実証実験を進める方針が示されている。実験結果次第で速やかに次の段階へ進めるとする自治体もあり、熊本での成果が横展開されている状況だ。
| 項目 | 数値・状況 |
|---|---|
| 16年被災地区(熊本市) | 52地区 |
| 対策工事実施地区(~25年度) | 2地区 |
| 今回液状化発生地区(今年) | 10地区 |
| 再発率(防災科研の調査) | 96% |
住民・地域に与える影響と住民が取るべき対応
液状化は道路陥没や住宅の沈下、基礎の傾きなどを通じて日常生活に直接的な影響を及ぼす。交通の確保や上下水道の復旧、住宅の安全確認など復旧作業の優先順位にも影響を及ぼすため、被災住民にとっては早期の工事実施が切実な課題だ。
- まずは自宅周辺の地盤状態や道路の復旧状況を自治体の案内で確認する。
- 単独で地盤補強を行う場合は、過去の被災履歴や周辺の地盤特性を踏まえた専門家の診断を受ける。
- 地域での対策工事を含む長期的な復興計画については、町内会や自治体との情報共有と合意形成が重要となる。
また、自治体の救援・補助制度の有無や対象、費用負担の扱いは地域ごとに異なるため、該当する市町村の防災・都市計画担当窓口で最新の情報を得ることが必要だ。
政策課題と今後の見通し
今回の事例が示すのは、過去の被災履歴に基づく優先的な対策の重要性だ。2016年の被災地で対策工事が行われていた場所では被害が抑えられた一方、工事が実施されなかった地域では再発被害が生じた。今後は被害履歴のある地区を優先して、地域単位での工事計画を策定し、住民負担や補助の仕組みをどう設計するかが自治体の大きな課題となる。
「効果があると聞いて安心した。住民の安心や復興のために早く対策が進んでほしい」と実験地区の町内会長は話す。
復興と防災の両立を図るには、科学的な調査結果に基づく工法選定と、地域住民の合意形成、財政的支援策の整備が不可欠だ。熊本の各自治体と住民は、再発リスクを踏まえた現実的な対策と負担の分担について議論を深める必要がある。
(太田 健二)