AIサーバーの要となるHBMやDRAMに的を絞る米国上場の「ラウンドヒル・メモリーETF(ティッカー:DRAM)」が、設定から短期間で巨額の資金を集めている。2026年4月の上場後、約3カ月で総資産230億ドル(約3.7兆円)に到達。期待の強さを映す一方で、値動きの鋭さや、関連するレバレッジ商品のリスクへの警戒感も市場で意識されている。
設定後わずかな期間で規模が巨額化。勢いの裏で、値動きの大きさやレバレッジ商品に伴う注意点も浮かぶ。
なぜ資金が流れ込むのか——AI需要が導く「メモリー相場」
生成AIの学習や大規模言語モデル(LLM)の推論は膨大なデータ処理を必要とする。これを支える中核部品が、データ帯域と高速性で優位性を持つ次世代DRAMやHBMだ。AI投資の加速に伴いメモリー価格の上昇期待が高まり、同テーマに集中投資するDRAMへの資金流入が続いた。記事が指摘する通り、AIブームの「裏方」であるメモリー市場への関心が、ETFの人気を底上げしている。
ファンドの素顔——少数精鋭の集中投資
DRAMは、世界の主要メモリー企業に的を絞る設計だ。構成銘柄はおおむね9〜10社。なかでもマイクロン・テクノロジー、SKハイニックス、サムスン電子の3社が約70%を占める集中ポートフォリオが特徴で、市況上昇局面では恩恵を取り込みやすい半面、下振れ時の振幅も大きくなり得る。日本企業ではキオクシアの名も組み入れに挙がる。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 上場日 | 2026年4月2日 |
| 総資産 | 約230億ドル(約3.7兆円) |
| 構成 | 主要メモリー関連 約9〜10銘柄 |
| 上位3社比率 | 約70%(マイクロン/SKハイニックス/サムスン) |
| 価格レンジ | 上場来:約26〜81ドル |
| 足元の株価 | 約57ドル前後 |
価格と取引環境——足元の水準と国内の取り扱い
2026年7月中旬の段階で価格は57ドル前後。上場来の安値が26ドル付近、最高値は81ドル台まで駆け上がり、値動きのダイナミズムが目を引く。国内では、主要ネット証券を中心に取り扱いが広がっており、順次購入が可能になっている。
- ウィブル証券
- SBI証券・松井証券
- マネックス証券
- 楽天証券
- moomoo証券
1口あたりの目安は約57〜60米ドル(約9,200〜10,000円)とされ、個人でも手の届く水準感だが、後述の通りボラティリティには要注意だ。
けん引役は「上位3社」——決算が示す勢い
組み入れ上位の業績がETFの存在感を押し上げている。決算動向は桁違いの伸長を映す。
マイクロン・テクノロジーは、2026年3〜5月期に売上高が前年同期比4.5倍、純利益が15倍と過去最高を更新。AI向けメモリーの受注が記録的に膨らみ、6〜8月期の売上見通しを500億ドルへ引き上げた。さらに2035年までに2,500億ドル超を米国内のメモリー生産・研究に投じる計画を示す。
SKハイニックスは2026年1〜3月期に、売上高52兆5,763億ウォン、営業利益37兆6,103億ウォン、純利益40兆3,459億ウォン。売上高が四半期で50兆ウォン超に達し、営業利益率72%とされる。7月10日には米ナスダック市場へADR上場、終値ベースの時価総額は約1兆2,000億ドル規模と紹介される。6月末には韓国南西部で総額400兆ウォンの半導体工場計画も公表された。
サムスン電子は2026年4〜6月期の速報で、営業利益89兆4,000億ウォン(前年同期比約19倍)、売上高171兆ウォンを示した。AIデータセンター投資の増勢とHBM販売の好調が追い風。さらに、政府の新産業戦略を背景に、同社とSKハイニックスは国内に半導体製造拠点を新設し、800兆ウォン規模の投資計画に踏み込む。
リスクを直視する——「集中」と「値動き」、そしてレバレッジ関連の注意点
DRAMは恩恵を取り込みやすい反面、価格の変動幅が大きい局面が続いてきた。構成上位3社への集中度が高いため、特定銘柄やメモリー市況の変調が指数以上に影響する可能性は織り込むべきだ。記事は、活況の裏でレバレッジ商品に伴うリスクが意識されている点にも触れる。一般に、短期的な価格変動が大きいテーマにレバレッジを重ねると、下落時の損失拡大や想定外の乖離など、投資家に不利な結果を招きやすい。ボラティリティと集中投資の二つの特性は、強みであると同時に弱みでもある。
また、価格レンジが26〜81ドルという事実は、短期間に大きな値幅が出うるテーマであることを示している。上昇相場では威力を発揮しても、反転局面でのドローダウン管理が試されるのは言うまでもない。
日本の投資家にとっての示唆
国内の複数の証券会社で購入できるようになったことで、個人の選択肢は広がった。とはいえ、AI特需=常勝という短絡は禁物だ。メモリーは景気敏感度が高く、サイクルの振れ幅も大きい。DRAMはそのサイクルへのベットを濃縮する設計であり、テーマの純度が高い分だけ、リスク許容度や投資期間との整合性を丁寧に確認したい。
加えて、上位企業の決算が示した通り、今は追い風が強い。しかし、需要・供給の均衡が揺らぐと、市況は速いテンポで様変わりする。ETFというラッパー(器)に安心感を覚えがちだが、その中身は個別企業の集合体であり、集中度の高いテーマ型である点を忘れないことが肝心だ。
結び——勢いと緊張感の両方を抱えて
AIインフラの基礎体力を担うメモリー半導体。その波に乗るDRAMは、3.7兆円規模に届く資金吸引力を示した。上位企業の決算は強烈で、投資マネーが群れをなす理由は明快だ。一方で、激しいボラティリティと集中投資という二つの刃は消えない。レバレッジ関連の注意点が意識されるのも当然だろう。光の強さは影の濃さと表裏。勢いの中心に立つこのETFを手に取るなら、その両面を同じ重さで量りにかけたい。