韓国の研究者がCIPM委員に選出
韓国標準科学研究院(KRISS)のパク・ヨンギュ副院長が、10月15日にフランスで開かれた第28回国際度量衡総会において、国際度量衡委員会(CIPM)の委員に選ばれた。今回の選出は、韓国から同委員会への選出が1996年以降で5人目となる点が注目される。
パク氏は選出後の取材で、人工知能(AI)を活用した超精密測定技術の高度化と、測定データの国際的相互利用を可能にする仕組みづくりに取り組む意向を示した。特に半導体や量子技術、温室効果ガスの測定など、政策や産業面で国際的な信頼性が不可欠な分野での標準化に力を入れる考えだ。
「AIは超精密測定技術の限界を克服する革新的な道具だ」
計測科学における課題とAIの役割
先端技術分野では、測定対象の微細化・複雑化に伴い、従来の数理モデルや解析手法だけでは処理し切れない大量かつ複雑なデータが生じている。パク氏は、AIを活用することでデータのパターン把握や雑音・誤差要因の分析が可能になり、
- 最適な測定条件の探索、
- 測定効率の向上、
- 複雑データの解釈支援
といった効果が期待できると説明する。一方で、AIを用いた解析の出力については、結果の正確性と不確かさを科学的に評価・検証する枠組みが不可欠であると強調している。
デジタル化と相互承認の重要性
パク氏は、計量標準のデジタル化の進展も指摘する。従来の人が読む文書中心の体系から、機械やAIが直接読み取り活用できる形への移行が進んでいる点を挙げ、デジタル校正証明書や機械利用可能な測定データの整備の必要性を強調した。これによりスマートファクトリーや自律型実験室でのリアルタイム解析・工程制御が現実味を帯びる。
| 焦点分野 | 課題 | 必要な対応 |
|---|---|---|
| 半導体 | 原子層単位の膜厚測定など微細計測 | 実用的な非破壊検査技術と国際基準 |
| 量子技術 | 量子コンピューターや量子センサーの性能評価 | 客観的な国際的測定基準の整備 |
| 環境・気候 | 温室効果ガスの正確な排出量算定 | 観測データと排出活動データの統合的評価 |
国際協力と産業への波及
パク氏は、国際的な測定結果の相互承認を通じて重複検査や技術的障壁を減らし、韓国企業の海外展開を支援する方針を示した。国際計量標準は特定国の利益に供するものではなく、各国が共通して信頼できる基盤であるべきだという立場から、国際協力の強化が不可欠と述べている。
こうした動きは、グローバルなサプライチェーンや貿易、環境政策に直接影響を与える可能性がある。たとえば半導体製造における膜厚測定や不良解析、あるいは温室効果ガス削減量の国際的な検証・認証において、測定基準やデータの互換性が整備されれば、企業や政府にとって透明性と効率性が向上する。
日本への示唆
今回の委員選出は、アジア地域における計測科学の存在感の高まりを示すと同時に、AIや量子領域での国際的なルール形成に各国が関与する重要性を改めて示している。日本の研究機関や産業界にとっても、測定の国際標準やデジタル校正の整備は競争力維持の観点から重要な課題である。
パク氏の掲げる目標は、技術的な評価手法の確立と同時に、信頼できる測定データの流通基盤を築くことにある。これが実現すれば、国際的に互換性のあるデータを基に産業政策や環境対策の実効性を高めることにつながるだろう。
国際度量衡委員会は世界の計量標準に関する政策協議を担う機関であり、そこへの委員選出は単なる人事を超えて、技術標準や規格の形成に影響を及ぼす。今後、パク氏がどの領域で具体的な基準作りを牽引するかは、産業界や研究コミュニティの注目点だ。