歴史ある洋館に新たな息吹 英国式ティーハウスが前橋に
前橋市川原町の国体道路沿いに建つ洋館が、8月からティーハウス「ヴィクトリアコテージ」として一般客の予約受付を始めた。建物はかつて「アルバート邸」として親しまれ、建築を手がけた故・萩原康充さんが最後に完成させた英国様式の洋館だ。運営するのは、東京で紅茶教室を主宰する立川碧さん。閉館となった建物を買い取り、英国文化にこだわったアフタヌーンティーを提供する場として再生した。
アルバート邸は2008年に誕生し、長年にわたり地域の結婚式場やレストランとして用いられてきた。報道によれば、経営を担っていた萩原さんは、県内で複数の飲食店を展開し、英国式の教会や邸宅を建てるなど、地域に英国文化を紹介する事業を進めた人物である。萩原さんは87歳で7月5日に亡くなっており、その思いを継ぐ形で建物が残されることになった。
提供メニューと館内構成
ヴィクトリアコテージの看板メニューは、本格的なアフタヌーンティー。提供される内容は、卵・きゅうり・ハムのサンドイッチ、ケーキ、焼きたてのスコーンに、6種類の味わいの異なる紅茶をポットで提供する形式が基本となる。スコーンにはクロテッドクリームと英国産ジャムをそれぞれ所定量載せるなど、本場の比率にも配慮している。
運営者の立川さんは、紅茶教室Cha Teaを2002年に東京で創業。紅茶の輸入販売や英国菓子の製造販売を手がけてきた経験を生かし、館内には紅茶の販売コーナーや英国紅茶博物館を設け、展示物を通じて歴史的背景を伝える試みも行う。
「群馬の人に英国文化を伝えたい」
館内の見学ツアーは、立川さんによるレクチャー、館内見学、アフタヌーンティーを組み合わせた約3時間のイベントツアーが用意され、2階の英国紅茶博物館も見学できる。企画は季節やテーマに応じて変更される予定で、訪れる客を飽きさせない工夫がされている。
地域への影響と課題
老朽化や事業不振で閉館・解体の予定が出ていた建物が保存され、観光資源として再生された意義は大きい。地域に対する主な影響は次の点が考えられる。
- 観光資源の保存と魅力向上:英国建築を生かした集客は、周辺の飲食店や小売りへの波及効果が期待される。
- 雇用と地域参画:運営にあたっては、地元出身者もスタッフに加わる動きがあり、地域の雇用機会につながる可能性がある(報道では己奈さんがスタッフに加わるとされる)。
- 文化継承と学びの場:英国紅茶博物館やレクチャーを通じて、食文化・建築文化への関心が高まることが見込まれる。
一方で、課題もある。営業時間は現状、金土日曜のみの営業であり、継続的な集客と運営の安定化は今後の重要なテーマだ。さらに、円安や海外の建材高騰が指摘される中、今後の維持管理費用や専門資材の調達が経営面の負担となる可能性がある。
利用者に向けた実用情報
現時点で公表されている店舗情報は次の通りだ。来訪を検討する際の参考にしてほしい。
| 店名 | ヴィクトリアコテージ |
|---|---|
| 住所 | 前橋市川原町2-41-3 |
| 営業 | 11時~、15時~の2部制(アフタヌーンティー) |
| 定休 | 月曜~木曜(金・土・日曜のみ営業) |
| 予約 | ホームページから(TableCheckの予約ページ) |
予約はホームページの専用ページから受け付けているため、来訪前に必ず確認してほしい。提供内容は約2か月ごとに変更されるというため、季節限定メニューやツアー内容の更新情報も事前確認が望ましい。
保存と継承に向けた視点
今回の再生は、地域の歴史的建築を保存しつつ新たな用途で活用する好例といえる。建築や文化資源を次世代へとつなぐためには、行政と民間の連携、地元住民の理解と利用が不可欠だ。報道では、閉館の危機を知った立川さんの買い取りと、萩原さんの次女・己奈さんがスタッフとして働く決断が紹介されており、個人の思いが行動につながった事例でもある。
前橋の市街地にとって、こうした建築資源の保全と活用はまちづくりの選択肢を広げる。今後、地域側がどのように関わり、観光や文化振興と結びつけていくかが注目される。訪れる市民や観光客にとっては、英国の雰囲気を感じつつ地域経済に寄与する場として定着するかどうかを見守りたい。
(執筆・加藤美咲)