松山・道後温泉 再整備と現代アートでにぎわい継続
愛媛県松山市の道後温泉は、日本最古といわれる歴史的泉源を有し、近年も観光ランキングで上位に入るなど高い集客力を保っている。道後温泉本館は保存修理工事が2019年に始まり、2024年12月に完了して本来の姿に戻った。外湯は本館のほかに別館「飛鳥乃湯泉」と「椿の湯」があり、それぞれ利用形態や魅力が異なる点が確認されている。
温泉はアルカリ性単純泉で、刺激が少ないことから湯治や美容に適していると評される。道後温泉の周辺には道後商店街が広がり、土産物店や飲食店が軒を連ね、名物の和菓子や郷土料理の行列が見られるなど観光消費が地域経済に寄与している。
- 道後温泉本館:1階に「神の湯」「霊の湯」の浴室、2階・3階に休憩室。重要文化財に指定された公衆浴場としての役割を持つ。
- 飛鳥乃湯泉(別館):飛鳥時代の建築様式を取り入れた外観、大浴場と露天風呂を備える。2017年開業で、本館にない体験要素がある。
- 椿の湯:市の花・つばきをシンボルとする市民の“親しみの湯”。地域住民に広く利用される公衆浴場である。
本館は1994年に日本で初めて公衆浴場として重要文化財に指定されており、保存修理の完了は観光資源の持続可能性にとって重要な意味を持つ。別館の飛鳥乃湯泉は、浴衣を着ての入浴体験など本館とは異なるサービスを提供することで、滞在型観光の受け皿を広げている。
現在はアーティストの蜷川実花さんを迎えた「蜷川実花 with EiM × 道後温泉 DOGO ART」を展開中である。会期は、2027年2月末まで。
まちぐるみで行うアートプロジェクトは2014年から継続しており、道後の街並みを舞台にした取り組みが来訪者の興味喚起につながっている。現代アートとの連携は、伝統的な温泉文化と現代的な観光演出を結びつけ、季節性に依存しない集客の強化につながる可能性がある。
地元住民にとっては、保存修理の完了やアート展開がもたらすメリットと課題が並存する。メリットとしては、観光客の増加による地元商店街や飲食店の売上増、地域ブランドの強化が期待される。一方で、観光集中や混雑、生活環境への影響、歴史的建造物の維持管理に係る経費や人手の確保といった課題も忘れてはならない。
| 施設 | 主な特徴 |
|---|---|
| 道後温泉本館 | 神の湯・霊の湯、2・3階休憩室、1994年重要文化財指定 |
| 飛鳥乃湯泉(別館) | 飛鳥様式の外観、大浴場・露天、本館にない特別浴室での体験 |
| 椿の湯 | 市民に親しまれる公衆浴場、つばきがシンボル |
住民への実用的な視点として、観光と共生するためのポイントを挙げる。まず、観光客が増えることで商店街などの消費機会は増大するが、通行や買い物の混雑が発生しやすい。地域としては、混雑対策や案内表示の充実、住民向け時間帯の確保など運営面の工夫が求められる。次に、重要文化財としての保存・活用の両立については、修理完了後も定期的な点検や長期的な保存計画が不可欠であり、財源や専門人材の確保が課題となる。
また、アートプロジェクトの継続は道後の魅力を多角化するが、展示・イベントの開催に際しては景観保全や周辺住民への配慮が必要だ。観光のピーク時には交通やごみ対策、騒音管理といった生活環境を守るためのルールづくりと実践が重要となる。
最後に、道後が今後とも地域にとって資産であり続けるために必要な視点をまとめる。歴史的価値の継承、地域経済の活性化、住民生活の質の確保を同時に見据えた取り組みが求められる。保存修理の完了を契機に、関係者と市民が連携して持続可能な運営方針を作っていくことが求められている。