街の案内板が“救護の備え”に
普段は掲示板や案内表示として使われ、災害や事故の際にはそのまま担架(ストレッチャー)として使える「タンカん板」が、京都府内で設置を拡大している。開発元の滋賀県草津市の企業「クラウドナイン」が2022年に製品化して以来、近畿圏を中心に普及し、京都市内では市役所や二条城、京都市動物園など公共施設を中心に約50基が置かれていると報じられた。
製品の特徴と設置状況
タンカん板には大・小の2種類があり、いずれも高さは182センチ。幅は大が91センチ、小が53センチで、耐荷重は大が120キロ、小が100キロとされる。看板の裏面を担架面として用いる設計で、特殊加工した発泡スチロールで衝撃を和らげる構造、アルミ製のアーチ状フレームを備え、小学生6人程度で成人を運べる強度があるという。
| 項目 | 大 | 小 |
|---|---|---|
| 高さ | 182 cm | |
| 幅 | 91 cm | 53 cm |
| 耐荷重 | 120 kg | 100 kg |
京都での導入と実際の活用
報道によれば、クラウドナインは近畿を中心に約310基を県内外に設置しており、京都府内では市の公共施設以外にも長岡京市や向日市の小学校、宇治市の公園などで約75基が置かれている。京都市動物園には今月16日に2基が設置された。二条城に設置されたものは実際に救助で使われた事例があるとされ、現場での有用性が確認されている。
和田晴太郎園長は「救急隊が来るまでの時間に寝かせられるだけでもいい。園の入り口に置いて誰でも使えるようにしたい」と話した。
製品の設置費用は、クラウドナインが負担するケースもあれば企業の協賛で賄われる場合もある。京都市動物園に設置された2基の費用は学習塾を運営する成基(中京区)が負担し、金額は報道で2基で55万円とされている。クラウドナイン側は、AEDのように地域に広く普及させたいとの考えを示している。
住民・来訪者が知っておくべきこと
この種の備品は「あること」を周知することが初動に直結する。担架そのものの存在や使い方が分からなければ、現場で有効に機能しにくい。現場で想定されるポイントを整理する。
- 設置場所の確認:訪れる施設の入口周辺や案内看板を確認する。設置は施設ごとに異なる。
- 使い方の理解:看板の裏面に寝かせる構造であること、複数人で運搬する必要があることを把握する。
- 通報と連携:担架使用時もまずは119番通報を行い、救急隊到着までの措置として使う点を理解する。
自治体や施設管理者は、設置だけで終わらせず、利用方法の掲示や職員・ボランティアへの周知、年1回程度の点検・訓練を検討することが望ましい。特に観光客が多い史跡や公園、イベント時には「見える化」と使い方の案内が重要になる。
地域防災と日常の安全対策の接点
タンカん板は災害時の備えという側面だけでなく、日常の来園者や観光客の急病・けが対応にも資する。報道にある二条城での活用や動物園での過呼吸事案に対する備えは、現場での安心感につながる。設置企業は「AED並みに普及させたい」と述べており、行政・企業・市民が協力して周知と設置を進める意義がある。
ただし、製品の配置や使用方法に関するルール整備、点検体制、所有者責任など、運用面での課題も残る。設置費用を負担するスポンサーの存在は導入を後押しするが、長期的な維持管理の負担と責任の所在を明確にすることが必要だ。市民は近隣施設の設置状況や、緊急時の初動対応方法を日頃から確認しておくとよい。
京都に暮らす住民や観光で訪れる人にとって、目に見える「安心」の一つとなり得る一方、実効性を高めるには周知と訓練、点検が不可欠だ。各施設の設置状況や使い方に関する情報提供が今後の課題となる。