有馬温泉街を伝える元旅館、国登録へ
文化審議会(会長 日比野勝彦)は2026年7月17日に開催した文化財分科会で、新たに163件の建造物を登録するよう文部科学大臣へ答申しました。この答申を受け、官報告示を経て登録有形文化財(建造物)は15,041件となる見込みです。神戸市からは「山下家住宅(旧下大坊)」の構成4件が新たに答申され、市内の登録有形文化財(建造物)は120件となる予定です。
対象となったのは、神戸市北区有馬町に所在する「山下家住宅(旧下大坊)」の主屋、座敷(新座敷)、土蔵、木塀の4構成要素で、いずれも
登録基準:一 国土の歴史的景観に寄与しているもの
として評価されました。これらは有馬温泉・湯本坂沿いの温泉街中心部に位置し、近代和風の旅館建築の意匠や間取りを良好に残す点が評価されています。
建物ごとの特徴と年代
| 構成 | 所在 | 建設年代等 | 特徴・評価(要旨) |
|---|---|---|---|
| 主屋(おもや) | 神戸市北区有馬町 | 明治時代前期、1955年、1997年、2015年改修 | 木造三階建の元旅館。階段・中廊下・客室の高欄など旅館建築の間取りや細部意匠を良好に残す。 |
| 新座敷 | 神戸市北区有馬町 | 明治時代中期、1967年改修 | 主屋と土蔵を繋ぐ木造二階建の座敷棟。付書院や床脇を備えた格式ある座敷空間。 |
| 土蔵 | 神戸市北区有馬町 | 明治時代前期 | 三階建の土蔵。外壁の仕上げなどが温泉街の景観を構成する。 |
| 木塀 | 神戸市北区有馬町 | 明治時代中期 | 総延長約6.0mの真壁作りの板塀。湯本坂沿いの歴史的景観を区画する要素。 |
地域への影響と留意点
今回の登録答申は、観光地としての有馬温泉の歴史的景観を保存する観点で意義が大きいといえます。登録有形文化財の制度は、50年を経過した歴史的建造物の保存・活用を促すもので、従来の指定制度を補完する緩やかな保護措置として届出制や指導・助言を基本としています。制度の趣旨としては、急速な土地利用の変化や生活様式の変化で失われかねない近代以降の多様な建造物を幅広く後世に伝える点が挙げられます。
- 景観保全:湯本坂沿いの歴史的景観を構成する建物群としての価値が明確になった。
- 活用の促進:登録は保存と活用を両立させる枠組みで、観光資源としての利活用が期待される。
- 手続き上の特徴:届出制を基盤とした緩やかな規制が適用されるため、保存と地域活動の両立を図る運用が想定される。
住民や事業者にとっては、今後の保存・改修等の際に届出や助言を受けることが制度上の前提になります。県内外から訪れる観光客にとっては、歴史的な旅館建築の空間や土蔵・木塀などが有馬温泉の景観理解を深める要素となるでしょう。
今後の見通し
今回の答申は文部科学大臣への答申段階であり、官報告示を経て正式に登録される予定です。神戸市内の登録件数は今後120件となる見込みで、市内の文化財全体に占める近代以降の建造物の比重が高まる可能性があります。地域住民や観光事業者、行政は登録後の活用や維持管理方法について情報共有と連携を進める必要があります。
有馬町は温泉地としての来訪者も多く、景観保存は観光資源の持続性に直結します。市民は行政の案内や届出手続きに注意し、保存と地域経済の好循環を目指す取り組みに注目してください。