国登録へ――網干の両家住宅が評価
国の文化審議会は、令和8年7月17日の文化財分科会の審議・議決を経て、新たに建造物163件を国登録有形文化財(建造物)とするよう文部科学大臣に答申しました。このうち、姫路市内では網干区に所在する赤尾家住宅(主屋など4件)と旧太田家住宅(主屋など4件)が含まれています。両住宅は、後日の官報告示を経て正式に登録される予定です。
今回の登録により、姫路市内の国登録有形文化財(建造物)は8件増え99件となる見込みです。姫路城をはじめとする既存の文化財と併せて、市内の歴史的景観の保全と活用に関する関心が高まることが予想されます。
各住宅の概要と評価点
| 名称 | 構成 | 所在地(住居表示) | 評価ポイント |
|---|---|---|---|
| 赤尾家住宅 | 主屋、店舗兼住居、土蔵、材木倉庫(計4件) | 姫路市網干区新在家895 | 港町網干の沿道景観を形成し、近代和風の造形が規範と評価 |
| 旧太田家住宅 | 主屋、土蔵、道具蔵、門及び塀(計4棟) | 姫路市網干区興浜67 | 街道沿いの屋敷構えを伝え、明治期の上層商家の景観に寄与 |
赤尾家はもと材木商で、江戸後期に赤穂から網干へ移住した初代が始めた家系に由来します。店舗兼住居は材木を用いた上質な近代和風建築で、造形の巧みさが評価されました。旧太田家は醤油の醸造販売や貝釦製造を生業とした商家で、主屋や付属建造物は街道沿いの歴史的景観を今に伝えるものとして評価されています。
「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
文化審議会は両住宅について、景観形成や造形の規範性を理由に評価しており、今回の答申文でもこうした観点が示されています。いずれの建造物も内部は非公開とされていますが、外観や構成要素が地域の歴史性を伝える点が登録の主眼です。
市民への影響と今後の課題
国登録は保存のための公的な評価であり、建造物の保全や利活用に関する支援の道が広がります。一方で、登録が決定しても即座に公開が始まるわけではなく、内部非公開のまま保存されるケースもあります。住民や自治体にとっては、次の点が関心事となります。
- 保存・修理に対する補助や技術支援の有無とその適用範囲
- 公開の可能性や地域資源としての観光活用の方向性
- 景観保全と地域の生活・産業活動との調整
とくに網干地区は古くからの港町として発展し、江戸期以降は領主の変遷が複雑だった歴史背景を持ちます。赤尾家と旧太田家は地域の経済活動と結び付いた上層商家の屋敷構えを残しており、保存の取り組みは地域史の伝承にも直結します。
市や関係者に求められる対応
登録後は、姫路市や地域住民、所有者らが連携して具体的な保存計画や公開・活用の方針を詰める必要があります。制度面では国の登録制度が示す保存指針を踏まえつつ、地域の実情に応じた以下の対応が重要です。
- 詳細な現況調査と保存継続のための財政計画の作成
- 保存技術を持つ職人や専門家との協力体制構築
- 外観公開やイベント等を通じた地域内外への情報発信
文化財指定は地域資源の価値を高める一方で、維持管理の負担が生じます。自治体や地元団体が早期に対話の場を設け、保存と利活用のバランスを探ることが望まれます。
今回の答申は、姫路市内の文化財数が増加する契機となります。今後の官報告示を注視するとともに、所有者や市の対応方針、保存・活用に向けた具体策の動きが地域にとっての注目点です。