制度本格運用前に自治体が先手
国が導入を予定している「ふるさと住民登録制度」を前に、京都府北部で自治体が先行した取り組みを展開している。住んでいないが愛着のある自治体にオンライン等で登録できるこの制度は、本格運用が今年度末以降に見込まれており、制度開始後に予想される登録者の争奪戦に先んじる狙いが各地で強まっている。
京丹後市は6月末にコミュニティーサイトを立ち上げ、出身者や寄付者らが市と交流できる環境を整えた。事業は三つの柱で構成され、暮らしや仕事、観光情報の発信、制度運用の戦略立案、そしてプロモーションを組み合わせて登録促進を図る。民間プラットフォームとも連携し、市外にいる関心層を組織的に取り込む体制を整えようとしている。
「国の制度が始まってからでは登録者の奪い合いになる。今からふるさと住民を囲い込む」
この発言は、先行的な取り組みを進める自治体の危機感と戦略を端的に表している。京丹後市は楽天と連携し、同プラットフォーム上に特産品や観光情報を掲載。参加者には旅行割引クーポン等の施策を通じて地域との接点をつくる手法を取り入れ、登録者2万人を目標に掲げる。
亀岡市の現状と目標
一方、亀岡市は3月に先行して制度を導入し、6月末時点で1,615人の登録を得ている。市は年間6,000人、5年間で3万人の登録を目標に設定し、関係人口の増加による人手や担い手の確保、地域経済への波及を見込む。担当者は、いきなり移住することが難しい人に対して、通って関わる関係人口をまず厚くすることが現実的な解だと説明している。
財源面の追い風と地域間の共通課題
両市が先手を打てる背景には、ふるさと納税の好調さがある。寄付者が多いことは外部に対する関心が高いことを示し、ふるさと住民登録につながりやすい。自治体別の受け入れ実績を見ると、2024年度は亀岡市が43億8千万円、京丹後市が23億円を受け入れ、府内で上位に位置した。25年度の速報値でも両市はさらに伸ばしており、亀岡市は44億2千万円、京丹後市は27億4千万円となっている。
| 年度 | 亀岡市 | 京丹後市 |
|---|---|---|
| 2024年度 | 43億8千万円 | 23億円 |
| 2025年度(速報) | 44億2千万円 | 27億4千万円 |
これらの資金は地域の情報発信や体験プログラム、交流事業の原資として活用できるため、自治体にとっては住民以外の関心層を取り込む有利な土台となる。
地域への具体的な影響と住民の視点
過疎化や高齢化が進む地域では、行事の担い手不足や産業の後継者不足が深刻な課題だ。ふるさと住民登録は物理的な移住を前提としないため、次のような効果が期待できる。
- 地域行事やボランティアへの参加者を増やし、担い手を補う
- 観光利用や消費を通じた経済波及で地場産業を支える
- 二地域居住やテレワークを検討する層との接点をつくり、将来的な定住につなげる
ただし、関係人口の増加は必ずしも自動的に地域の担い手不足を解消するわけではない。参加者が継続的に関わる仕組みづくりや、現地の受け入れ能力の向上が不可欠だ。地域側の人的・物的資源が限られるなかで、効果的な連携プログラムをどう設計するかが問われる。
京丹波町の取り組みと示唆
北部以外でも動きはある。京丹波町は数年前にファンクラブを立ち上げ、会員向けに田植え体験などの地域活動を提供している。担当者は国が想定するプラットフォームよりも先に実践してきた点を強調し、地方自治体側でできる工夫を推している。
先行事例は、登録者確保に向けた多様な方法を示すと同時に、地域間競争が激化するリスクを伴う。国の共通プラットフォームが整備されるまでの間、自治体は独自色を出して関心層を囲い込む動きを強めるだろう。
今後の注目点
注目すべき点は次の通りだ。
- 国の本格運用が始まった際の登録ルールや特典の統一性
- 自治体が個別に設ける誘引策と、地域間の競争の度合い
- 関係人口が実際の地域課題解決(担い手確保・産業継承)にどう結びつくか
自治体はこれらを踏まえ、短期的な集客策と並行して、長期的に地域に寄与する関係の設計を急ぐ必要がある。京都府北部の取り組みは、制度開始後に全国で起こりうる変化の先行指標として注目に値する。