国指定重要文化財の耐震工事、見た目を損なわず内部で補強
郡山市開成の県立安積高校敷地内にある旧福島県尋常中学校本館の保存修理が、2027年春の竣工に向け終盤を迎えている。建物は1889年(明治22年)に建てられ、1977年に国の重要文化財に指定された。その後、2011年の東日本大震災と2021〜22年の福島県沖地震で被災し、2011年には外装のほぼ全面が剥落、福島県沖地震では全面に亀裂が入る被害を受けた。これらを受け、2023年12月から耐震補強工事が続けられている。
保存修理を請け負う八光建設(郡山市)の現場では、文化財としての外観を可能な限り保ちながら、内部に補強材を入れる工法が採られている。現場責任者によると、補強工事は既に完了し、現在は壁を塞いで塗り直す段階に入っているという。表からは補強箇所が見えにくく、補強の様子を確認するには屋根裏に入る必要があるとのことだ。
補強の要点と工法
| 補強箇所 | 目的 | 工法 |
|---|---|---|
| 柱間 | 大きな揺れでの変形防止 | 合板をはめ込み剛性を確保 |
| 屋根裏の梁 | 横揺れ等に対する耐力向上 | 梁間に筋交いとして鉄筋を取り付け |
| 基礎 | 石積みの崩壊防止 | 鉄筋コンクリートで補強 |
重要文化財としての復原基準に従い、外観は1889年完成当時の姿にできる限り近づけるため、外部に見える補強を避ける工夫が続けられている。塗り直しは色むらを避ける観点から、上部を白、下部をねずみ色に統一して実施する計画だ。
発見された「落とし物」と資料価値
今回の工事で、建物内部の隙間や床下などから47点の「落とし物」が見つかった。大半は生徒の所持品とみられ、年代が特定できる資料も含まれる。発見物には、授業料の領収書(「昭和11年10月」記載、納付額は「四円弐拾銭」)、表に国会議事堂が描かれた10円紙幣(昭和21年以降の発行)、安積高校が1961年に発行した3年生の身分証明書、英単語カードや三角定規といった学用品のほか、女性水着の写真の切り抜きや紙製めんこ、チューインガムの包み紙など日常品も含まれている。
「偶然の発見とはいえ、時代の記憶を宿しており残す価値があると考えた」
この発言は、安積高校の元教諭で現在は安積歴史博物館の事務局を務める渡部正一さんのもので、出土品は建物と地域の歴史を伝える一次資料としての価値があると評価されている。展示や保存の扱いについては博物館側で整理を進め、来館者への公開も想定している。
教育現場・地域への波及と見学機会
6月には近隣の大学で建築デザインを学ぶ学生43人が現場を訪れ、屋根裏や左官職人の塗り直し作業を見学した。震災や補強工事の具体を学ぶ貴重な現場教育の場となっている。保存修理の現場公開は、専門的な学びの機会を地域にもたらすだけでなく、防災意識や文化財保全への理解を深める効果が期待される。
- 工事期間:2023年12月〜2027年春(竣工予定)
- 博物館再オープン予定:2027年9月
- 見学申込:安積歴史博物館のウェブサイトから随時受付(https://anrekihaku.or.jp/)
博物館は再開までの間も、建物内部や発見された品々の見学を随時受け付けているとしており、見学希望者は同館の案内に従って申し込みを行う必要がある。具体的な見学方法や安全確保の要件は申込時に案内されるため、事前確認が重要だ。
地域の観光・防災の両面での意義
今回の修理は単に建物を保存するだけでなく、東日本大震災や福島県沖地震での被災経験を踏まえた防災対策の事例を地域に示す意味も持つ。重要文化財を震災から守るための内部補強の工法や、外観を維持しつつ耐震性を高める手法は、他の歴史的建造物にも応用可能な知見を生む。
また、発見された資料は教育資源としての価値が高く、地域史や学校史を伝える展示に生かされることで、地域住民や訪問者の関心を引く可能性がある。安積歴史博物館の再オープンは、郡山市の歴史観光の目玉の一つとして期待されている。
関係者は今後、保存修理の記録や発見物の整理、展示計画を進めるとともに、今後の地震に備えた維持管理体制の構築が課題になるとみている。見学や展示に関する最新情報は、同館の公式サイトで随時更新される。