産業界が警鐘を鳴らす！欧州は、未来に不可欠なもう一つの資源である「アンモニア」へのアクセスを失いつつある

ヨーロッパの化学産業は、エネルギーコストの急増に直面し、肥料生産の立場を失いつつあります。

エネルギーコストの影響とその対応

ドイツの大手化学企業BASFの最新の財務報告書は、ヨーロッパの化学産業が直面している課題を浮き彫りにしています。フランクフルトでの記者会見で、CEOのマルクス・カミエス氏は、エネルギーコストの上昇が業界に与える影響について警鐘を鳴らしました。

アモニウム生産の重要性とそのリスク

エネルギーを大量に消費する化学産業は、今、重要な岐路に立たされています。エネルギー価格の高騰により、多くの企業が生産を縮小するか、ビジネスモデルを再考せざるを得ない状況です。カミエス氏は、特にヨーロッパにおいて、一部の製品の生産が経済的に持続不可能になっていることを指摘しました。これは、ヨーロッパ全体を潤すために必要不可欠な資源であるアモニウムの生産にも影響を及ぼしています。

長期的な戦略としてのアモニウム生産の移転

2023年、EU内のアモニウム生産は1002.05万トンに達し、ドイツ、ポーランド、オランダなどの国々が主な生産国となっています。EUの全体的な生産能力は年間2060万トンに及び、42の工場に分散しています。ただし、農業、特に畜産業からのアモニウム排出削減の圧力が高まっており、これは肥料生産のための安価な資源へのアクセスを「妨げる」要因となっています。アモニウムの製造には、エネルギーを大量に消費するハーバー・ボッシュ法などの方法が用いられています。

未来への戦略的な質問

カミエス氏は、ヨーロッパが高コストに直面する中で、中国などのガス資源が豊富な地域からアモニウムを輸入しなければならない未来を描いています。これは、長期的な戦略と主権に関する重要な問題を浮き彫りにします。

世界のアモニウム生産についての統計

2024年には、世界のアモニウム生産は1億8200万トンに達し、中国、インド、アメリカ、ロシアが主要な生産国となります。2023年にEUが生産したアモニウムは1020万トンであり、2021年には全世界の生産能力は2364万トンに達しました。2032年までには、世界のアモニウム市場は2200億ドルに達するとの予測があります。

現代の肥料の成分とは？

現代の肥料は、主に窒素（N）、リン（P）、カリウム（K）などの主要栄養素から構成されています。窒素はしばしば硝酸、アンモニウム、尿素の形で供給され、リンはカルシウムまたはアンモニウムのリン酸塩で、カリウムは塩化物、硝酸または硫酸塩から供給されます。これらの肥料には、作物の特定のニーズに応じて、硫黄、マグネシウム、微量元素などが含まれることもあります。

出典：

• 東京大学 環境科学研究所
• 日本農業新聞
• 化学工業日報