このあまり知られていない金属がトン当たり30,729ユーロに達し、中国と先進国の間に緊迫した地政学的対立を引き起こす

世界的な緊張の中心に位置する戦略的金属、アンチモンの価格が急騰中。

アンチモンはメタロイド（金属と非金属の特性を併せ持ち、ヒ素に似た性質を持つ）であり、一般にはあまり知られていませんが、現在、経済と地政学の渦中にあります。2024年3月以降、この金属の価格は急上昇し、2024年10月22日には歴史的な高値の32,500ドル/トン（約30,729ユーロ）に達しました。この価格の高騰は、2011年の前回の記録（17,500ドル）を大幅に上回るものであり、供給の制約、地政学的緊張の高まり、そしてエネルギー転換に伴う需要の増加が重なった結果です。

アンチモンの多様な利用

アンチモンは古代から使用されていますが、その用途は大きく変化しています。現在、主に電子機器や建築分野での防火剤として利用されており、バッテリー技術や太陽光発電パネルにおいても重要な役割を果たしています。また、軍需産業における戦略的な金属としての特性から、多くの国、特にアメリカと中国にとって不可欠な存在となっています。

中国が支配するアンチモン市場

世界のアンチモン消費は主に中国に集中しており、中国は最大の生産国であり消費国でもあります。2011年時点で、世界のアンチモン消費量は約206,600トンと推定され、その大部分が中国から来ています。アメリカも主要な消費国であり、用途は主に難燃剤（52.4%）、鉛蓄電池（25.9%）、および鉛合金（11.5%）に分かれています。環境規制が厳しくなる中、アンチモンの供給は中国の輸出政策に大きく左右されています。中国は世界の約36%の埋蔵量を保有しています。

価格高騰の原因とその影響

最近のアンチモン価格高騰の要因として、鉱石の品位の低下や埋蔵量の更新が難しくなっていることが挙げられます。これに加えて、中国がこの金属の輸出制限を強化したことで、世界的な供給に対する緊張が高まりました。2024年9月15日から施行されたこれらの制限は、国際市場に衝撃を与え、アメリカやEUとの地政学的緊張を一層深めています。

産業界への影響と対応策

アンチモンの急激な価格上昇は、依存する産業にとって大きな課題を突き付けています。企業は代替品の模索やリサイクル技術の最適化を余儀なくされており、これによりグローバルなサプライチェーンの脆弱性が浮き彫りになっています。この状況は、各国が資源の多様化や戦略的独立性の強化を図る必要性を強調しています。

• 田中健一 – 日本経済新聞 科学技術部記者
• 佐藤美智子 – 週刊ダイヤモンド 編集者
• 山田太郎 – テクノロジー評論家