コロナ後の反発が石炭需要を押し上げる。
2024年の国際エネルギー機関(IEA)の最新報告書では、世界的な石炭消費の深刻な状況が描かれています。2020年に大幅な減少を経験した後、石炭需要は失った分を取り戻すだけでなく、さらなる成長を続けています。2021年には7.7%の急増が見られ、これは単なる一時的な回復ではなく、2027年まで続く上昇傾向の始まりを示しています。この需要の大部分は、インドや中国などの新興国から来ており、特に発展途上国では、エネルギーインフラが依然として石炭に大きく依存していることを浮き彫りにしています。そこで問われるのは、欧州のエネルギー転換政策が、石炭消費を増やし続ける新興国の中で意味を持つのかということです。
西側諸国の削減がもたらす限界
欧州連合(EU)やアメリカは、石炭消費を削減するために重要な取り組みを行ってきましたが、これらの削減は今や世界的な消費に対してほとんど影響を及ぼしていないようです。かつて石炭需要のリーダーであったこれらの国々は、現在では全体の消費の10%未満を占めるに過ぎません。この影響力の低下は、インドや東南アジアといった急成長地域への消費の移行を強調しています。
インドとASEANの成長する役割
IEAの分析によれば、経済成長が著しい地域での石炭消費の急増が指摘されています。インドは、産業の拡大やインフラの近代化を進めており、インドネシアやベトナムといったASEAN諸国も消費の大幅な増加が見込まれています。中国においては、再生可能エネルギーの導入が進んでいるにもかかわらず、石炭の消費は依然として強固です。
CCUS技術の期待と現実
IEAの報告書では、二酸化炭素の捕らえ、貯蔵、再利用技術(CCUS)の限界も指摘されています。これらの技術は石炭の燃焼による環境への影響を軽減する上で重要ですが、現在の設備では全体の排出量のごく一部しか捕捉できていません。進行中のプロジェクトがこの能力を向上させる可能性はありますが、たとえ三倍になったとしても、石炭燃焼に伴う二酸化炭素排出量を大幅に削減するには不十分です。
将来の課題と政策的な課題
石炭消費の動向は、世界的な気候目標に対して深刻な挑戦をもたらしています。今後数年間に予測される増加は、環境への影響を高めるだけでなく、政治的および社会的な大きな課題も引き起こします。よりクリーンなエネルギーへの移行は、経済的利益や石炭を優先するエネルギーインフラによって妨げられています。政策立案者は、経済発展と環境維持の間でのバランスを取る必要があります。
- 駒井 謙太氏(エネルギー政策の専門家)
- 鈴木 和幸氏(環境エコノミスト)
- 中村 梨花氏(サステナビリティ研究者)
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